真輔の風

「そうだな。わしも行こう。
運転手さん、あんたはこの子と一緒にどこかに隠れていてくれ。
その内に警察が来るから、状況を説明してくれ。」




残していく百合子の身を気遣うような言葉を出している。


その時の栄作は… 

茜ちゃんにはかわいそうだが、

自分たちがその場を見ることが出来れば
現行犯で告訴できる。

長いこと司法の場にいた栄作は、
瞬間的にそんな事を思っていた。

悪い奴を野放しには出来ない。

多分あの子は… 時間的にも手遅れだろう。

長年の経験で、何となく分っていた栄作だ。




「分かりました。でも大丈夫ですか。
相手は荒っぽい連中ですよ。
警察を待ったほうが… 

あ、はい、分かりました。
近くにいますから… 」




運転手も車の中での話は聞いているから、
ことの重大さは理解できる。

しかし、この二人で。

一人は老人で一人は高校生、

それも見るからにひ弱そうな、可愛い男の子。

大丈夫、を通り越して自殺行為のようだ。


が、その二人は同じような鋭い目をして中へ、

エレベーターへと向かっている。


そして、二人がエレベーターを待っていると、

降りてきたエレベーターから…



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