真輔の風

茜は自分を追いかけているのが真輔だったことで、

余計に興奮し絶望を感じている。


真輔の気持ちはともかく、

茜は病弱でも変人でも真輔が好きだった。

初めて会った小学五年生以来ずっと気になっていた。

高校も、母の店に来た真輔の祖母の話から、

真輔が、ただ近いと言う事でこの高校を受けると言う事を知り、

同じ高校にしたのだった。


それなのに… もうダメだ。



茜の気持はそう言うものだったが… 

真輔は自分の体力のなさに腹が立っている。

女に追いつけないでへたばりそうな自分が… 

悔しかった。

が、ここで諦めることは出来ない。


真輔がやっと五階への階段を上りながら上を見上げると、

茜は手すりを乗り越えて飛び降りようとしていた。

六階建てのビルの屋上から… 




「やめろ。」




真輔は最後の力を振り絞って茜に、
と思ったが間に合わない。

とっさに、真輔は茜の落下線の少しずれたところの三階に、

テラスがあるのが目に入った。



あそこだ。


茜が宙に舞った時を同じく、

真輔も全身の力を振り絞って、斜めに飛び降りた。

途中で茜を掴んで… 

一緒に… 

と、斜めに落ちた。
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