真輔の風

真輔君… どうしたの。


高校生になって背は伸び、

色白で日本人離れした目鼻立ちが

涼しげな美少年、という感じを出していたのに… 


半袖から伸びている腕も、

首も顔までも赤黒く変色している。

その症状はわずかな月明かりでさえもわかるほどだ。


一緒に落ちて、自分の上で動かない真輔… 

茜はそれまでとは違う恐怖を感じていた。


自分のことなど、
自分が受けた辱めなど死にはあたらない。

自分が死ねばあいつが喜ぶぐらいだ。

そんなことより真輔君… 

こんな私を助けようとして… 

どうして真輔君がここにいるのか。


とにかく、名前を呼びながら私を止めようとして、

後を追ってきたのだ。


体力もないのに… 

走って階段を上って、飛び降りて… 

真輔君も飛び降りた。

そう、私を捉まえて… 

私は無事なのに真輔君は… 

昔に戻ってしまった。


もっと悪いかも知れない。

こんな色が出て来て… 

呼吸が… その内に止まりそうだ。


どうしよう… 私を放さないように、

スカートをこんなに握り締めている。 


茜の死のうとした心はその時点で見事に消えてしまった。

動かない真輔のことを心配する心だけが、

恐怖に覆われ暗闇の中でうごめいている。

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