真輔の風
そんな真輔なのに、
どうしてあんなに必死で追い駆けて来たのだろう。
それよりもどうしてあそこにいたのだろう。
そう言えば… おじいさんもいたような…
茜は真輔の下敷きになったまま空を見ている。
動いたら落ちるかも知れない。
自分は死のうと思ったのだから仕方がないが…
自分を助けようとしていた真輔…
何かあったら、
可愛がっていたおじいさんやおばあさんが嘆き悲しむ。
そんなことは出来ない。
神様、お月さま、お星さま…
真輔君を助けてください。
まだ息はしていますが死にそうです。
早く助けてください、お願いします。
茜は夜空にかかる月や星に向って祈っている。
いつの間にか新たな涙が頬を伝わり、
無意識のうちに自分の胸に覆いかぶさっている
真輔の頭、髪をなでている。
愛しい人を感じながら…
「小田切さん… 聞こえますか。小田切さん… 」
そんな時だった。
茜の耳に… どこかで真輔を呼ぶ女の声が聞こえる。
上からだ。
「ここです。助けて… 真輔君が…
誰か呼んできてください。」
「落ちたのですか。小田切さんは… 」
「ここにいるけど… 動けないから…
お願い、早く誰かを。」
「待っていてください。すぐ… 」