真輔の風
一度家に戻った茜は、母親の昌代に伴われて病院に来て、
婦人科の検査を受けた。
その足で真輔の病室にも寄ったが…
真輔はまだ意識なく眠っていた。
「おじいさん、おばあさん、すみません。私が馬鹿なことをして…
真輔君、私を助けようと… 」
茜が… 改めて真輔の容態を見て胸が詰まっている。
「心配しなくてもいい。その内に起きる、
今は疲れて眠っているだけだ。
こいつは長い距離を走ったことがないから、
体がびっくりしただけだ。
体育の時間はサボっているだろう。
野球とかサッカーのような、
ボールを追いかけることもしていなかったと思うから…
まあ、その内に体力もつける。気にしないでくれ。
が、茜ちゃん、こいつが元気になっても、
私に追いつけなかった、などと口に出して言わないでくれよ。
傷つくからな。
これでも男としてのプライドはある奴だからな。」
栄作は冗談とも本気とも取れるような口調で茜を見て、
ウインクを送った。
「おじいさん… 」
茜は栄作のその言葉に救われたような気持ちになった。
結局真輔は一日半ぐっすりと休んで気が付いた。
呼吸器と点滴の器具をはずせばいつもの真輔になっていた。
が、龍雄と同じ部屋で嬉しい、という気持ちはなかったようで、
すぐ家に帰った。