真輔の風

茜は助かったかも知れないが… 

これでは探偵にはとてもではないがなれない。

探偵は体力勝負の時がある。

強力な敵と戦うこともある。

とにかく犯人を追い詰めて、

息切れして逃がしてしまう、

と言う様な無様な光景にでくわすことは、

絶対にあってはならない。


スマートな探偵は、

あくまでもスマートに事を終えなくてはならない。

今、探偵志願の真輔の脳裏は、

そのことしか無かった。


茜の心のケアーの心配より、

惨めな自分が… そのことで頭はいっぱいだった。

そう、こんなことでは探偵にはなれない。


普通に考えれば… 

幼なじみの同級生、茜を命がけで助けたヒーローのはずだが、

自分の情けない姿を目の当たりにして… 

真輔にはショックのほうが大きかった。

こんなところが普通ではない精神状態なのかも知れない。


茜には会いたくなかった。

普通なら、助けた真輔より、

汚されたことを知られている茜のほうが会いたくない、

という反応を起こすものだが… 

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