真輔の風

「ええ、私たちは… 携帯で連絡をとって、
一緒に食事をして散歩する位の… 
二・三千円のお小遣いを貰って… 
若い女と話をするだけでいい、という人もいたから。

でも、宮村さんと小田切さんにあった時は… 
あの人は… 初めはそうだったけど、
ホテルへ行って話をしたい、と言って… 

あの時は怖かった… ありがとう。」




そう言って百合子は真輔が初めて百合子を見た時の事を話している。




「龍雄が見知っていて良かったな。
あいつは何でも良く知っている。」




と、的確な事を言っている真輔。

客観的な言葉はまともだが、

そのことも、どんな風に感じているのかは分からない。




「ええ… それで、あの日は… 
友達と二人で須磨へ行くつもりで… 
でも、志信が、あ、志信とは中学が同じで、
今は須磨の高校へ通っていて… 

彼女の一年先輩に、
あ、飛び降り自殺した女子高生のニュース、知っていますか。

彼女、志信の友達で… 」




何となく想像は出来たが、百合子は藤井加代子の名前を出した。




「え、やっぱり、飛び降り自殺した女子高生と知り合いなのか。」




信一が興奮したような声を出して百合子を見つめた。




「いえ、私は… 
夕方になって、泊まる場所が欲しくて志信が連絡を入れたのです。
そしたら… 私たちニュースなど見ていないから… 

それで志信は慌てて須磨へ行き、
私、一人になってしまって… 

八時ぐらいまでは海の方でブラブラしていたけど… 
サイトを見てみたら… それで会って… 
でも、また変な人で… あそこへ連れ込まれて… 」




思い出したように、声を殺して… 涙ぐんでいるようだ。

自業自得とは言え悲しかったことに変わりはない。


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