真輔の風

「妊娠の心配は。」


「えっ。」




真輔の、その歯に衣着せぬ言葉に… 

百合子はもちろん、信一も驚いている。

連れ込まれて弄ばれたのなら可能性はあるが… 

高校生では聞き辛く、言い難いことだ。

信一にはとても出来ない。




「ええ… それが… 私、生理中だったから… それで男は… 」




驚いたが、百合子は正直に話した。




「そうか、良かったな。
自殺した女子高生は妊娠していたらしい。」




やはり、どうも真輔はつかみどころが無い。

百合子を心配していたというより、話の流れとして聞いているようだ。

が、信一は何も言わない。




「小田切さんはそんなことまで知っていたのですか。」


「うん、刑事に聞いた。
僕が奴らの顔写真を捜している時… 」


「妊娠って、父親の分からない子、なのか。」




信一は、援助交際をしていたのだから、
と思いながらも声を出してしまった。

妊娠、なんていう言葉は使うだけでも何となく抵抗があるが、

不思議と今は、どんな言葉でも… いけそうだ。




「本当のところはわからないが、
とび職の彼氏は自分の子、と言っているらしい。」




真輔が聞いている話を信一に教えた。

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