真輔の風
「ええ、私もそう聞いています。
だからお母さん、あ、その彼氏の、ですが、
自殺した加代子さんをとても可愛がっていたようです。
高校生だから出産後はお母さんが主になって育ててくれる、って、
志信に話していたらしいです。」
「そうか… じゃあ、彼氏はたまらないな。」
「ええ… 何でも、加代子さんを脅して苦しめて、
死に至らしめた奴らは許さない、と言って、暴れたから…
二日前まで留置所に入れられていたみたいです。
お母さんは警察の配慮だ、と言って泣いていたそうですが…
でも、加代子さんの家の人は冷たかったそうです。
恥さらしだ、と言って…
お葬式も田舎でひっそりとしたみたいです。」
「親の責任を果たさなくて、恥さらし、かよう。
いやだな。」
信一が悲しそうにポツン、と言った。
百合子は自分に置き換えて考えているようで…
信一の言葉が心に刺さる。
親は子供を選べないが子供も親を選べない、
両方で努力して上手くやっていかなくては…
補導され、親に愛想尽かしされ、
構ってもらえなくなった経験を持っている信一と百合子は…
加代子の話に心が沈んだ。
「信一、お前、茜に会ったか。
何か言っていなかったか。」
いきなり真輔は話題を変えた。