真輔の風

そういうのを、命がけの愛、と言うのではないか。

それなら、素直に、
心を大きく持って茜を支えてやれば良いのに… 

助かったのだから無事を喜ぶだけで良い。

信一はそんな風に考えて真輔を見ている。


百合子も… 
真輔に好意を持っている百合子だが… 

茜を命がけで助けた、
という真輔の好意には胸が熱くなっていた。

自分の命の危険を顧みずに、
一緒に飛び降りたという真輔… 

茜が羨ましかった。

が、今の真輔の態度は… 分からない。

どうして会えない、などと… 



そうなのだ。

二人は真輔がとても深く茜を愛している、と思っていた。

自分の命より大切に思っている。

素晴らしい純愛だ、と感激すら覚えていたのだ。



そう、真輔の気持ちは祖父母以外の人には理解出来ない。

茜に追いつけなくて、涙が出るほど悔しかった、だなんて… 

会って、そのことを言われるのが嫌で会いたくない、だなんて… 

そんな子供っぽい心を誰が想像できる。


純粋に人を愛する心は強いが… 

異性として愛する心はまだ持ち合わせていない。

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