真輔の風

ただ小説を読み漁っているから言葉は豊富。

しかし、茜をその対象に感じた事もなかったのだ。

真輔の中では、アレはただ、自分の前に悪事があり、

探偵志願者として見逃すわけには行かなかった。

その被害者が茜だったということだけだったのだ。




「そうだ、横井の彼氏、いたぞ。
案の定、あのスナックに監禁されていた。

今は龍雄の病院、隣の部屋にいる。
横井の奴、毎日来ているらしい。

昨日は茜と一緒に龍雄も見舞っていたなあ… 
龍雄はモテモテだ、とおばさんが喜んでいる。

龍雄のことを、
世間に迷惑をかけている不良、と思っていたから、

それでも親だから… 
嫌われても仕方がないが、ちょっとだけ悲しかった、って、
龍雄と俺に話した。

だから今はすごく嬉しい、って。
あ、そうだ、龍雄、一人で動けるようになった。
トイレに一人で行けるようになった、と言っていた。

勿論、まだ骨が回復し易いように点滴をして、
歩行器のようなものにつかまって、だけどな。」


「そうか、良かったな。僕も行こうかなあ。」





その日の夕食後、

兵庫県警捜査四課の高橋警部と横原刑事が、

捜査協力へのお礼と、
事件の報告を兼ねて訪れた。

まだ事情聴取の終わっていない関係者もいるが、

とにかく山城組という名前が出てきたのは真輔のお蔭。

それが突破口になり次から次へと悪行が明らかになって行った。

おまけに真輔たちの行動で、

一気に山城組を消滅することが出来たのだった。

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