真輔の風

「まだ覚せい剤の入手ルートが判明出来ていませんが、
時間の問題です。

何しろあの山城は… 小田切さんの突きのお蔭で、
信じられないぐらい素直になっていますから… 」




そして、茜が訴えを出す、と言っているが、

余罪が多すぎるから、
そのことは早く忘れるように、と伝えたことも… 




「そうか、そうだな。
忘れたくても忘れられるものでは無いだろうが、
なるべく静かにしてやりたい。」




茜の状態を一番理解している栄作が穏やかに応えている。




「わかっています。
しかし、夏休みで良かったです。

あの宮村という高校生も休み中にはギブスが取れるようですから… 
まあ、若いということはすごいです。

彼は、まあ、体も大きいですが体力も気力も強いようで、
医者が感心していました。
我々も一安心です。」


「そうか、良かったな、真輔。」




最近は信一や百合子も真輔を訪ねて来ているが、

なんと言っても龍雄は、

初めて出来た真輔の友達。

真輔によれば… 龍雄はともかく、

真輔は5年生の出会い以来、ずっと龍雄の事を覚えていたらしい。

中学は違ったが、高校で顔を見て、
嬉しくて声をかけたという。

そんな事をする真輔ではなかったはずだが、

龍雄はそこまで真輔の心に入り込んでいたのだ。

そして今、その龍雄の心身ともの強さを耳にして、

栄作は我が孫のように気持が良い。




「うん、僕も明日病院へ行ってくる。」


「そうか、それがいい。」

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