真輔の風
翌日、真輔が龍雄の見舞いに行こうとしていると、
来客ブザーが鳴り、
茜と母親の昌代が現れた。
玄関に出た真輔は、
思いっきり驚いて急いで祖母を呼んだ。
その時の真輔は… まさに小学生のような心と行動だった。
驚き動揺すると、すぐ祖母、
いない時は祖父を呼ぶのが真輔のくせになっていたのだ。
おばあちゃんっ子の真輔が顕著に出てしまった。
祖母に笑われ…
見れば昌代も茜と顔を見合わせて笑うのを堪えているようだ。
そして三人はリビングへと入って行った。
真輔は… 出かけようと思っていたが、
やはりもう少し家にいることにした。
昌代はそんな真輔に娘の難儀を助けてもらった事に礼を言い、
栄作とよしのに改めて丁寧に礼を言っている。
そして今回の借金の発端を話し始めた。
自分のために両親が家や田畑を売って引越ししてくれ、
順調に店は営業していた。
が、その内に明石に住んでいる弟が入院して、
家族の生活費に窮するようになった。
それで店舗兼住宅の家を担保に、
銀行から借金をして弟を援助した。
ところが次第に店の運営が上手くいかなくなり、
銀行への利子の返済に困っていた時に、
客だったスナックの神山さと子の言葉に乗ってしまった。
それ以後は高利に悩まされていた。
と、主に栄作に話している。