真輔の風
昌代の借金の返済は、
何となくこの土地の名士のようになっている栄作が銀行と話をして、
少しの間、待ってもらうようになった。
あの時、真輔たちが騒がなければまだ片付いていなかっただろう。
真輔の推理は、
吉沢百合子が絡んでいる、というところから始まったのだが、
結果的に昌代の窮地も救ったことになった。
昌代が話している間、茜は時々真輔の顔を見ている。
真輔は気が付かないように無視を決めていた。
そしてさりげなく二階の自分の部屋へ入った。
普通の子なら、高校生になっているような子なら、
さっさと出かけてしまうものだろうが…
来客があった時はいつも祖母の近くにいた真輔、
そういうことがスマートに出来ない。
そう、おばあちゃんっ子の真輔なのだ。
そして、茜が何か話し出すと困る、と思って二階へ行く。
さっきから真輔の顔を見ていた茜…
絶対に次は茜が声を掛けてくる。
その前にこの場を離れなくては、と思って自分の部屋へ戻った。