真輔の風
真輔はベッドに寝転んで、近くにあった推理小説を読もうとしていた。
が、目は文字を追っていても頭には届かない。
こんなことは初めてだ。
「真輔君、入ってもいい。」
ドアのノックの音と共に茜の声がしている。
驚いた真輔… 本当は、駄目だ、入るな、と叫びたかった。
が、黙ってドアの開くのを見ていた。
「わあ、すごい部屋ね。
広いのに本で埋まっている感じ…
私、入ったのは初めてね。」
当たり前だ。
話だってしたことが無いのに、どうしてこの部屋に入るって言うのだ。
「ありがとう。長いこと会わなかったみたいに感じるわ。
真輔君、どうして宮村君のところに行かないの。
友達なのでしょ。
山田君は来ているわよ。」
茜は何もなかったような態度で真輔に話し掛けている。
この会話なら許容範囲だ。
「今日、行こうとしている。」
「そうだったの… 今まで調子が悪かったの。」
「どうして。」
「えっ、どうして、というわけではないけど…
あ、あのね… 」