真輔の風
茜は目の前で、ベッドに座り、
言葉少ない無表情の真輔を相手に、
話すことをためらいながら顔を見ている。
真輔は… 手にした本をパラパラめくり、
茜の顔を真っ直ぐに見ることはしない。
まさにピリピリした神経質な空気が二人を取り巻いている。
「真輔君、私のこと、どう思う。」
その時の茜の顔はこわばり、
意を決して声を出している茜だが…
真輔は見ていない。
なるべく目を合わさないようにしているのだ。
その時の真輔、茜の言葉を理解する前に、
自分が聞きたくない言葉を浴びせられたような気持ちになっていた。
そう、私のほうが真輔君より早かったでしょ、
と言われたような気がした。
こんな状態は大嫌いだ。
早く帰ってくれ、と、心の中で叫んでいる真輔だ。
しかし、自分の事を真輔がどう思っているのか、
必死の思いで口にしている茜は、
そんな真輔の心理状態など分かるはずもない。
分かるとすれば祖父母だけだ。