真輔の風

そう感じた茜は、自分の髪に顎をくっつけ、

目をつむっている真輔を見上げた。



真輔はその頃、今まで味わったことのない感情を知った。

茜を動かないように抱きしめて… 

初めは本に書かれていた通り、

ヒステリーが治まるまでじっと抱きしめる、

ということを忠実に実行した。


女がどんなに暴れても放さない。

どんなに怒鳴られても黙って抱きしめる。

それがヒステリーを起こした女を落ち着かせる常套手段だ。



が… 茜を抱きしめている内に、体中が熱くなってきた。

そして茜の体から良い香がしてきているのが感じられた。

シャツを通して感じる茜の乳房… とても柔らかい。

茜はもう動かない。

ヒステリーは治まったようだが… 

どういうわけか放したくない。


下半身が、股間のあたりが… いつもと違う。

このままいつまでも抱きしめていたい気持ちだ。

もう少しこのままでいよう… 

それから… 

と、茜に女を感じて、本当にキスがしたくなった真輔… 


その時、茜の視線を感じた。

ゆっくりと目を開けて… 

顔を上げて自分を見ている茜の唇を見た。


その唇は… 

キスをしたい、と言っている。



真輔は勝手に解釈してキスをしようと顔を近づけた。


その時、下から祖母の呼ぶ声が聞こえてきた。
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