真輔の風
真輔が車から出たとき、茜も一緒に車を出た。
「どうしてここにいるのだ。
車が行ってしまった。」
この茜の行動も、真輔には想定外だ。
ここで茜と別れて、
おかしくなっている自分の頭とゆっくり考える。
真輔の中ではそうなっていた。
「近くだもの歩いて帰るわ。
でも、ちょっと真輔君に話があるの。」
「なんだよ。」
「ええ… さっきはありがとう。
嬉しかった… 私のこと嫌ではなかったのね。
あんなにしっかり抱きしめてくれて… 」
「・・・」
言葉は出さなかったが、真輔はその言葉で安心した。
どうやら茜は何も気づいていないようだ、と。
「ねえ、真輔君、夏休み、テニス、しない。」
「テニス… 」
「そう、テニス。
私、中学のときはテニス部だったからテニスなら出来るわ。」
「どうして。」
「だって… 真輔君、今スポーツに燃えているのでしょ。
おじいさんが言っていたわ。
よく走っているのでしょ。」
どうして祖父が茜に話したのか理解出来ないが…
そんなことはとんでもない話だ。
誰が茜と…
真輔はいつものように相手を無視する態度になっている。
もう帰れ、と心の中で叫びながら…
その反面、何となくいつまでも一緒にいたいような気持ちもある。
そんな気持ちの自分に戸惑っている真輔だ。