真輔の風

「こんな所を小田切さんの彼女に見られたら具合が悪いではないですか。」



百合子は無関心な態度で、

しかし自然体で自分と並んで歩いている

真輔の気持ちが気になって話しかけた。



「彼女って。」



真輔は、
まるで異星人と話をしているように真剣な顔をして、

百合子の言葉を正確に理解しようとしているようだが、

話しかけた百合子はその反応に戸惑っている。

単に普通の会話なのに… 



「仲良くしている人… いるのでしょ。」



それでも敢えて気にならない振りをして、
百合子は言葉を続けている。



「いない。」



「そんなことないでしょう。小田切さん、とても人気がありますから。」



「そんなことは知らない。」



つっけんどんな真輔の言葉… 

会話もそこまでだった。


住宅地に入り吉沢という表札のかかった家の前に来た。



「あの… さっきはありがとうございました。」



会話は無くても、

もう少し歩いていたかった百合子だったが、

門扉の前で百合子が中へ入るのを待っている真輔。
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