真輔の風
いつも学園都市の高校まで自転車で通っている。
西神中央まででも自転車で行くことは簡単だ。
田んぼや畑の中に出来ている狭い農道を行けば
近道にもなるし安全なのだ。
真輔が西神中央の近くまで来た時、
前から小さいバイクが近付いてきた。
慌てているようだ。
それは…
いつも龍雄と一緒にバイクを乗り回している、
同じ学校の奴だった。
顔は何となく覚えているが、
興味が無かったから名前は知らない。
「真輔… 良かった、龍雄が大変だ。
変な奴らに囲まれてやられそうだ。
俺に逃げろと言って、向こうの資材置き場のほうへ行った。
女が… あ、とにかく一緒に行ってくれ。」
そいつは真輔の姿を見ると一瞬安堵の顔をして、
慌てた様子で叫ぶように声をかけた。
龍雄が大変… それだけで真輔の気持ちは十分だった。
「分かった。自転車はここに置く。
後ろに乗せてくれ。」
「ああ… 良いか。」