真輔の風
真輔は高校生になってから身長が伸びて170㎝あるが、
中学までは前から一・二番のところを維持していた。
特に小学校の頃は、
咳き込むと全身アザのように赤黒くなり…
入院していた日のほうが登校した日より多かった。
ひ弱でいつ倒れるか分からない子、というイメージだ。
しかし、体力が出来たからか、
中学の三年間では一度も喘息が起きなかった。
まだ細くて色白、ひ弱なイメージはあるがチビではない。
そして日課として、
剣道の竹刀を振っていた祖父から、
10歳位から体調の良いときは、
健康のためと称して手ほどきを受けていた。
試合をした事など一度も無いが、
真輔は結構剣道を気に入り、
意識した事など無いが、
かなり上達していた。
真輔には25歳になる姉、愛香がいる。
父の孝輔はやはり裁判官の道に入ったが、
結婚を機に弁護士に転身した。
今では企業弁護士として丸の内に事務所を構えて活躍している。
愛香は父に影響されたのか、
二年間アメリカのロースクールで学び、
今年から父の事務所で働き始めている。
父や姉とは…
別に仲が悪いと言うほど何も無い。
とにかく、例え自分だけ病弱だと言っても、
父や姉だけが東京だ。
それで真輔は幼い頃、
忙しい事を口実に、
あまり会いに来ない父を慕って、
寂しさを募らせていた。
そして今では、
親しみを感じられない疎外感を持って、
父や姉を見ているところがある真輔だ。