真輔の風
そして信一のバイクが止まった所は…
その場所は駅の近くと言うのに、
本屋には出入りしても
他の事に無関心な真輔には全く無縁の場所だった。
駅の裏手はまだ建築中の建物が多く、
その奥が資材置き場となっている。
特にその辺りは昼間でも薄暗く、
工事関係者も朝と夕方に出入りするぐらいで、
日中はほとんど人の気配がない。
しかし神経を集中させれば、
奥の方から男たちの罵声と共に、
不気味な金属音が響いている。
「あっちだ。君は隠れていろ。」
真輔は腰の引けている信一を見てそう言いながら、
足元に転がっていた鉄パイプを拾い、
木刀の代わりに持った。
奥で何が起こっているか分らないが、
とにかく龍雄がいる。
やられているのなら…
弱い信一の存在は邪魔でしかない。
真輔は音のするほうへと近付いて行った。
そしてそこで真輔が目にした光景は…
龍雄が6人の男たちに、
鉄パイプか何かで撲られたり、
蹴られたりしていたようで、
ぐったりとしてうずくまっていた。