真輔の風
「龍雄、大丈夫か。」
真輔は一目散に龍雄に駆け寄り、
声を掛けて揺さぶってみたが何の反応もしなかった。
気を失っているのか、それとも…
「お前ら、許さないぞ。」
真輔にとって、そんな龍雄の姿は想定外だった。
龍雄が留年した事で同級生になっているが、
今でも真輔の中では、
龍雄は力強くて優しいお兄ちゃん。
そして、しょっちゅうでは無いが、
話をすれば自分の知らない世界を教えてくれる。
とても興味の湧く人生の師のような存在だ。
それが今、真輔は動かない龍雄を目の当たりにした。
こんな事も初めてだったが、
言葉では言い表せないような激しい怒りが真輔の中に湧き起こり、
それが一瞬にして爆発している。
真輔は龍雄をそのままにして、
鉄パイプを木刀のように構えて男たちを見据えた。
体内の血液が暴れ始めたように熱くなり、
いつもは涼しげなその目は一瞬にして獣のように鋭くなった。
男たちは、いきなり飛び出してきて、
許さないぞ、とわめき、
チャンバラでもするつもりか、
パイプを構えてこっちを睨んでいる子供。
帰ろうとしていたが、
その真輔の行為を鼻で笑っている。