真輔の風

「分かった、わかった。もういい… 落ち着け。
そんなに興奮したら後が面倒だぞ。

顔にアザが出てきている。大きく深呼吸して… 
おい、誰か上手い水を持ってきてくれ。」



栄作は… 真輔の顔が赤くなっていたから誰かに撲られたのか、
と思ったが、気が付いた。


これは、真輔の場合、極度の緊張や興奮に陥ると、

昔の名残でアザが浮き上がってくるのだ。

相当興奮していたようだ。

とにかく落ち着かせて… 後はわしが… 

可愛い孫をこんなに怒らせ、

興奮させた警察を許せるものではない。


余程暴れたのか、

目の前でおとなしく水を飲んでいる真輔の手首は、

手錠の痕の痛々しさだけが目立つ。



今度は栄作の気持ちが高揚してきた。

手錠まで掛けられて今まで留置所だったのか。

アザは顔だけだろうか。 

体を調べてみなくては… 

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