真輔の風

「おじいさん、帰りましょう。
こんな所に一刻もいたくありません。

 真輔、かわいそうに… 」



そう言って真輔を抱きかかえるような格好でよしのは泣き出している。


その場に居合わせた警察官たちは、

為す術がないように顔を見合わせているだけだ。


はっきり言って、
何故この少年をここに連れて来たのかさえはっきりしない。

現場へ向った警官たちの話では、

この少年は鉄パイプを振り回して喧嘩をしていた、と言う事だった。

押えようとしたら刃向かったから仕方なく皆で取り押さえて、

暴れるから警棒でみぞおちを襲い、

失神させて手錠をして連れて来た。

そして今まで留置場で… 


一緒にいた男は完全に意識をなくして倒れていた。

病院へ運び込み家族に連絡した。

意識不明の重態らしいが、

調べれば何度も補導した事のある不良だった。

それなら、鉄パイプを振り回して一緒に暴れていたこの少年も

無関係とは言い難い。


それから財布に入っていた定期券の住所から、

この少年の家族にも連絡を入れただけだ。
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