真輔の風
龍雄の両親は地下鉄の駅が出来る前から
スーパーマーケットを営業している。
人口が増えた分、
経営能力もあるようで店は繁盛している。
兄が二人と妹がいるが、
どういうわけか、
龍雄は子供の時から人一倍体が大きくて
乱暴だったから嫌われていた。
両親もあまり龍雄には構わなかったようだ。
そんな子はよく学校もサボった。
小学校六年のとき、
自分の校区を抜けて山間部のほうへ遊びに行った。
そこで、道にうずくまって咳き込んでいる真輔を見つけた。
龍雄は体が大きくて、
する事が少しばかり乱暴だったから
良く思われなかったが、
根は素直で正義感の強い少年だった。
自分よりかなり小さいひ弱な子供、
それも涙を流しながら咳き込んでいる子供を見れば放ってはおけない。
それで背負って家まで運んだことがあった。
そう、それが今、
二人を結び付けている出会いの基となったのだが、
もちろん、その時の龍雄にとっては
忙しく動き回っている日常の一場面、
そんなことはすぐに忘れていた。
しかし、助けられた真輔は…
高校で龍雄を見かけた時すぐ分かった。
5年前、自分を背負って家まで連れて行ってくれたお兄さん…
の、はずだったが、
実際は一年だけ上だった。
小学、中学は校区が違っていたが高校は同じ、
学園都市のはずれにある自由な雰囲気の学校だ。