真輔の風
「あんたはこのことは警察官の不祥事、
不始末、失態と認めるのかね。」
「はい。どう考えましても…
お恥ずかしいことです。
二度とこのようなことは起こさせませんので穏便にお願いしたい、
と思っていますが… 」
「そうか。真輔、この人はこう言っているが、お前はどうだ。
お前を撲った警官を訴えるか。
父さんが喜んで仕事をするぞ。」
栄作は誇らしげな顔をして、
東京にいる真輔の父を引き合いに出している。
しかし真輔は、
そんな事を父に聞かせたくは無いととっさに思った。
「父さんは関係ない。
警察が龍雄をやった奴らを捕まえてくれるのなら水に流すよ。」
「それはもう… 警察の仕事です。
しかし、どんな奴らだったのか。
彼はまだ意識が戻っていませんので… 」
これは明らかに傷害事件だ。
それがわかっても、
相手がどこの誰かも分からないのだから
捜査はこれから始めるしかない。
第一、被害者はとても口の利ける状態ではない。
警察官の顔はそう言っている。
「僕が覚えている。
やりあった相手は忘れない。」
警察官が本気で犯人探しをするようだ、
と感じた真輔は協力的な言葉を出した。