真輔の風
そう、真輔の家には3匹の犬がいる。
5年前に隣の犬から生まれた柴犬のタローを筆頭に、
1年前、裏の畑で見つけた、
野垂れ死に寸前だった雑種のハナ、
それまではどこかで飼われていたように首輪はしていたが…
獣医の話では10歳ほどになっているらしい。
雑種だからタローより大きいが、おとなしい犬だ。
それに今年の正月明け、
真輔が学校帰りに見つけた子犬・ジロウ。
農道で死んでいた親犬の下で、
か細い声で泣いていた死に損ない。
まだ目も見えていなかったから、助からないと言われたが…
生命力の強さは並ではない。
と、犬は3匹に増えている。
人家がまばらなこの辺りでは、犬はいたほうが良い、
とばかりに栄作たちも可愛がっている。
勿論犬の世話は真輔の仕事だ。
犬たちのシャンプーが終り、
ブラッシングをしながら真輔は祖父に話しかけている。
「昨日のこと、何かわかったかなあ。」
「龍雄があの調子では…
それにしてもひどくやられたものだ。」
「うん… 」
今日の真輔、口には出さなかったが、
病院で意識無く横たわっていた龍雄の事が頭から離れなかった。