真輔の風
そう、確かに龍雄は目立っていた。
相変わらず体が大きくて、
我が物顔で校庭を歩いていた。
不良と言う看板をつけて…
高一の夏休み前、
真輔は思い切って龍雄に声をかけてみた。
しかしその時の龍雄は一瞥したように睨んだだけで、
まともな声も無かった。
一緒にいた子分のように取り巻いている数人の学生を従え、
無視して行ってしまった。
それは、
蒼白い顔の子供っぽい新入生が何を血迷っている、
と言わんばかりの態度だった。
そして二学期が始まり文化祭のシーズン。
時々起こる事らしかったが、
他校の不良が仲間を連れて
文化祭荒らしに来た。
そうなれば当然のように、
校内で風を切って歩いていた龍雄と喧嘩になった。
しかし龍雄の子分は数の内に入らないほど弱く、
結局、多勢に無勢で龍雄がやられそうになった。
その時、加勢したのが真輔だった。
真輔の特技、
祖父に手ほどきを受けていた剣道が役に立った。
それから改めて話をして、
真輔は4年前のことを感激しながら礼を言った。