真輔の風

そう、確かに龍雄は目立っていた。

相変わらず体が大きくて、
我が物顔で校庭を歩いていた。

不良と言う看板をつけて… 


高一の夏休み前、

真輔は思い切って龍雄に声をかけてみた。

しかしその時の龍雄は一瞥したように睨んだだけで、

まともな声も無かった。

一緒にいた子分のように取り巻いている数人の学生を従え、

無視して行ってしまった。

それは、
蒼白い顔の子供っぽい新入生が何を血迷っている、

と言わんばかりの態度だった。



そして二学期が始まり文化祭のシーズン。

時々起こる事らしかったが、

他校の不良が仲間を連れて
文化祭荒らしに来た。

そうなれば当然のように、

校内で風を切って歩いていた龍雄と喧嘩になった。

しかし龍雄の子分は数の内に入らないほど弱く、

結局、多勢に無勢で龍雄がやられそうになった。


その時、加勢したのが真輔だった。

真輔の特技、
祖父に手ほどきを受けていた剣道が役に立った。

それから改めて話をして、

真輔は4年前のことを感激しながら礼を言った。

< 5 / 155 >

この作品をシェア

pagetop