真輔の風
「子供の頃、体が弱かったから入院が多くて…
暇つぶしに読み始めていたらはまってしまった。
龍雄から聞かなかったか。」
真輔は真一の表情から…
信一の気持は簡単に理解できた。
だから、祖父母以外では、
龍雄しか入れたことのない部屋に入っている真一に、
真輔としては丁寧に説明しているつもりだ。
そして、その信一は…
この雰囲気には圧倒されているが…
聞いたどころではない。
この信一は小学校も中学も真輔と同じだった。
真輔のことは初めから知っていたが、
知っていて離れていただけのことだ。
普通より体が小さくて、顔色が悪く、
しょっちゅう学校を休んでいた。
噂もいろいろ聞いていたから、
関りたくない子、と頭に入れていた。
一緒にいて何かあったら、
自分のせいにされるかも知れない。
多くの子ども達はそんな事を思っていた。
同じクラスでも友達になるどころか、
知らない振りをしていたのだ。
そして真輔も、
たとえ目が合っても二コリともせずに無視していた。
そう、真輔も、友達云々も考えず、
ただ祖父母が学校へ行く事を進めるから、
何となく行っていただけ。
はっきり言えば同じクラスになったことも何度かあるが、
ただそれだけの関係だった。