真輔の風
二人は、少し本をずらして床に座り込んでいる。
真輔はベッドにもたれる形で、
そいつは窓側の壁にもたれて、
顔をつき合わせて座っている。
「なあ、何と呼べばいい。
龍雄の友達、ということは知っているが… 」
その真輔の言葉に、そいつは驚いたような顔をした。
確かにこうして顔をつき合わせて話をした事は無かった。
それでも同じクラスになっていたのだから、
名簿ででも名前ぐらいは、と思っていた。
しかし龍雄からも、
ちょっとおかしいところもあるが、
いい奴だ、頼りになる、
とも聞いていたから、気にしないでおこうと思う。
「俺は山田信一、龍雄は信一、と呼んでいるが… 」
「そうか、じゃあ、僕も信一と呼ぶよ。
それで… 僕も昨日のことを聞きたいと思っていた。
昨日、何があったのか話してくれ。
女と言う言葉を聞いたような気がしているが、
女がいたのか。」
「ああ… あの… 龍雄は。
病院へ行ったけど… 警官がいたから… 」
一度補導された経験を持つ信一は、
警官とは関りたくないと思っている。
龍雄が一緒にいるときなら別だが…
しかし龍雄の事が心配でたまらない。
今の行動も、それゆえの事に他ならないのだ。