真輔の風
この部屋に入って…
確かに不思議な感覚を受けているが、
突拍子も無い考えかも知れないが、今の信一は、
目の前にいる真輔が、まさにこの部屋の主、
頼りがいのある名探偵に感じられているようだ。
「あ、ああ… 昨日は…
二人でバイクを走らせようとコースを考えていた時だった。
変な男たちがあの工事現場で女をいたぶっていたようだった。
初めは気が付かなくて、
俺たちはバイクを隣の工事現場の近くに止めて…
工事は休みのようで人がいなかったから、
上のほうへ上って地図を見ていた。
ああ、俺たちの好きな場所だよ。
高いから見晴らしが良くて風が気持良いだろ。
そしたら隣の現場で…
龍雄はすぐに気が付いて下りて様子を見に行ったけど、俺は…
バイクは好きだけど動きは早くないから…
俺が行った時は女が逃げていくところだった。
女はひどい格好だった。
服を抱えて転がるようにして走って行った。
龍雄は形成がわるかったよ。
何しろ男たちは大勢いたから…
それでも俺を巻き添えにしたくなかったようで、
逃げろ、と言って…
俺、喧嘩はからきしだから…
それで誰か助けを、と思っていたら… 」
「僕に出会った。」
「ああ… 地獄に仏、と思って嬉しかったから…
でも、すぐに後悔して…
慌てて警察へ連絡したけど…
ごめん、関るのが怖くて… 」