真輔の風
そう言って信一は涙を浮かべて真輔を真っ直ぐに見つめ、
それまで真輔と同じように足を投げ出していたが、
正座して頭を下げた。
今朝、学校へ行ったら真輔が休んでいた。
龍雄のことは想像していたが真輔も…
昨夜はおじいさんたちと一緒に病院へ行くのを見た。
やはりやられていたのか、と思った。
警察が駆けつけたから安心したが、
その内に真輔が連れて行かれた。
全く訳が分らなかったが…
自分のせいだ、とばかりに、
いたたまれなくなって来たのも事実だ。
見れば…
真輔の手首とあごの周りにはアザのような痕がある。
信一はそこから目をそらせない。
真輔もその視線を感じている。
「気にするなよ。これは名誉の負傷だ。
昨夜は、確かに警察は無能な働きをしたが、
祖父が警察を脅してくれたからもう水に流した。
今日の午後、警察が来て、
龍雄をやった男たちを見つけるために顔写真を見ることになっている。
やりあった相手は覚えているから絶対に見つけてやる。
ただし、男たちに前科があれば、の話だが…
信一、お前何か覚えていないか。」
「う、うん… 実は… 」