真輔の風

ブザーを押したら吉沢百合子の母、和子が出て来た。

仕事から戻ったところのようだ。




「あの… 百合子さんと同じ学校の小田切真輔と言います。
百合子さんに会いたいのですが。」


「いませんよ。」




和子は面倒くさそうな顔をして中へ戻ろうとしている。




「あの… どこにいるのですか。」


「知りません。あの子がどこで何をしていようが興味ありません。

もう良いかしら。忙しいの。」


「でも… おばさんの子供のことなのに… 」


「まあ、何を言っているの。

高校生の子供が外で何をしていようが、
そんなことまでいちいち詮索などしていないわよ。

大体あの子は問題児、不良なのよ。

あの子のために兄や妹がどれだけ迷惑がっていることか、
家にいないほうが良いぐらいなのよ。」




百合子の母は、そんな話はしたくない、

という心をあらわに顔に出して真輔を睨むように見た。



「そんな… おばさんは心配していないのですか。
おばさんも自分の子供を不良だと思っているのですか。」


「当たり前でしょう。

私の言う事など聞かないし、警察には補導されるし、
あなただって知っているのでしょう。

とにかく顔を見ていないから戻っていないのよ。

どこかにしけ込んでいるのでしょ。
友達もろくなものではないようだし… 

あなたも友達なの。

ちょっと感じが違うようだけど… 
どんな関係の友達。」
< 73 / 155 >

この作品をシェア

pagetop