真輔の風

そう言って、真輔を興味の目で見直した。


真輔を見るその目、その言葉… 

百合子とセックスでもしようと誘いに来たのか。

わざわざ家にまで押し掛けて厚かましい、
と思っているように感じられる。


真輔はこの母親の言葉や態度が信じられなかった。

家に戻っていない、ということが分かっていても
全く心配していない。

それどころか、いないほうが良い、と言っている。

どうなっているのだろう。



とにかく吉沢百合子が家にいないのは分かった。


彼女は昨日、あの男たちから逃げ出してから、

家にも戻れなくてどこかに隠れているのかも知れない。

友達のところか。

友達… 誰が友達なのか、そんなことは分かるはずもない。

龍雄がいればすぐ分かるかも知れないが、

今はその龍雄が大変な時なのだ。


自分は一度、それもほんの数分間話をしただけだ。

彼女は自分のことを知っていたと言ったが… 

全く知らない人だ。


何か手がかりを捜さなくては… 

しかし、大騒ぎをして皆に尋ねるわけにも行かない。

そんな事をすれば彼女のことを暴露するようなものだ。
< 74 / 155 >

この作品をシェア

pagetop