真輔の風
そう言って、真輔を興味の目で見直した。
真輔を見るその目、その言葉…
百合子とセックスでもしようと誘いに来たのか。
わざわざ家にまで押し掛けて厚かましい、
と思っているように感じられる。
真輔はこの母親の言葉や態度が信じられなかった。
家に戻っていない、ということが分かっていても
全く心配していない。
それどころか、いないほうが良い、と言っている。
どうなっているのだろう。
とにかく吉沢百合子が家にいないのは分かった。
彼女は昨日、あの男たちから逃げ出してから、
家にも戻れなくてどこかに隠れているのかも知れない。
友達のところか。
友達… 誰が友達なのか、そんなことは分かるはずもない。
龍雄がいればすぐ分かるかも知れないが、
今はその龍雄が大変な時なのだ。
自分は一度、それもほんの数分間話をしただけだ。
彼女は自分のことを知っていたと言ったが…
全く知らない人だ。
何か手がかりを捜さなくては…
しかし、大騒ぎをして皆に尋ねるわけにも行かない。
そんな事をすれば彼女のことを暴露するようなものだ。