真輔の風

「探偵… 」



まさにその時の信一の反応は… 

真輔が祖父母に話したときの、
彼らの反応と同じものだっただろう。

信一は真面目に将来の話をしていたつもりだったが… 

一瞬にして分からなくなってしまった。


探偵… 

探偵って… 人捜しとか浮気の調査が仕事。

少なくとも日本の探偵はそんな事をしているようだが… 

真輔は小説に出てくるような探偵がいると思っているのか。

そう言えば部屋に… 

信一はいきなり真輔の部屋を思い出した。


推理小説を読みすぎて、

現実社会と創作された物語を一緒にしている… 

真輔はやはりまだ子供だ。

子供の部分があるから気をつけなくては。


龍雄も、ちょっとおかしいところもあるが… 
と言っていた。


即座に芽生えた自分の正確な気持ちを心に隠して、

信一は何事も無いように真輔に応じている。




そして二人は龍雄の病室へ行ってみた。

心拍数が少し出てきたからその内に意識は戻るらしい、

と龍雄の母親は、真輔と信一の顔を見て弱々しく言った。

一晩ですごく老け込んだようだ。

それでも話がしたいようで、二人にお茶とお菓子を出してくれた。

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