真輔の風

真輔は病弱だったせいか、
精神的な成長が遅れているところがある。

おばあちゃん子、ということがそれに輪をかけているようだ。

それでも入院中から読み出した少年・少女向きの推理小説、

江戸川乱歩から始まりシャーロックホームズやポワロなどの世界に
どっぷりと浸かり、

そのせいか洞察力が鋭く、
正義の味方的な考えは人一倍強い。

そして、とにかく真輔には友達がいなかった。

今、真輔が友達と意識しているのは龍雄一人。

それまでの真輔の生活を思えば、

こうしてれっきとした友達が出来た事に、
祖父母はとても喜んでいる。



それで今日は… 
学校は期末試験前とあって半日授業。

試験勉強などまともにしない二人は、

龍雄の友達が新開地のライブハウスでバンドを組んで、

夜の演奏のために練習をしているところに、
陣中見舞いに行くところだ。

それなら夜行けば良いのに… と思うのだが、

真輔は祖父母と暮らしている。

それに、休みならともかく平日では年寄りは心配する。


そこには、無意識に、

真輔の家族に嫌われないように考えている龍雄がいた。

とにかく龍雄は、
自分を最高の笑顔で迎えてくれる真輔の祖父母が好きだった。

だから、こいつには明るい内のほうが似合う、

と勝手に考えている龍雄だ。

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