真輔の風
「この子は生れた時から大きくて、
元気すぎて、する事が荒っぽかった。
放ったらかしで大きくなってしまった。
兄たちに喧嘩を吹っかけたりするから、
怒った記憶しかないの。
小学校の四年生位から学校を抜け出していたみたいで…
五年生のとき補導されたのが初めで…
中学に入って、
初めてこの子が不良と呼ばれていることを知ったのよ。
お笑いでしょう。
私も店に出ていたし、兄たちの進学問題も出てきていたから、
不良なら不良で勝手にしたらいい、
なんて思ったこともあったけど… 一応、高校にも入れたから。
でもね、その心の底には、
この子ならやられることはない、
こんな怪我をするなんて思わなかった。
喧嘩だけは強い、と思っていたから…
それが… ヤクザとまで喧嘩をするようになっていたなんて… 」
龍雄の母親は、
意識なく横たわっている息子への母性本能が爆発したように、
放任してきた事への後悔から自分を責めている。
母親の言葉に… 二人は驚き… 温かいものを感じていた。
吉沢の母親とは大違いだ、とさえ思った真輔だ。
17・8歳と言えば立派な青少年。
全て自己責任だ、と思っていたが、
こんな息子の姿を一晩見ていたら
冷静ではいられなくなっていたようだ。
二人を見て自分を責める言葉を出している。
「おばさん、違うよ。
龍雄は巻き添えになっただけだよ。なあ。」
真輔は自分たちの前で泣き出した母親を、
すごく不憫に感じた。