真輔の風
「おばさん、龍雄が… 」
「え、ええ… 龍雄、龍雄、聞こえる。
分かるかい。母ちゃんだよ。」
信一が急いでナースコールのブザーを押している。
「よし。これで一安心だ。
後は普通に治療をしていれば一ヶ月位で退院できますよ。
骨折がひどいから動かないように、
お母さん、しばらくは気をつけていてください。
ここは完全看護だけど、
この患者には少しの期間、付いていてやってください。」
そう言って医者は出て行った。
龍雄は…
意識は戻った、と言ってもまだうつらうつらしている。
警察官は…
明日、事情を聞かせてもらいたい、と言って廊下に戻った。
「母ちゃん… 真輔、信一… お前たちいたのか。」
龍雄が意識を取り戻したことで安心した頼子は、
今夜の準備をしてくる、と言って出て行った。
病室には真輔と信一が残っている。
「龍雄、良かったな。安心した。なあ、信一。」
真輔は素直に自分の気持ちを声にしているが、
信一は感激で胸がつまり、声が出なかった。