真輔の風
「茜… どうして。まあ、いい。
あいつが知っているのか。」
あの時の状況をどこまで分っているのか、
と言う様な言葉を出している真輔。
その時点では信一のほうがまともなようだ。
「多分… 俺が見たのはあいつのような気がする。
一瞬だったから確信は無いが… 」
そして龍雄は… 龍雄にしては珍しく、
躊躇した言い方をしている。
「茜が… 」
真輔はもう一度、茜の名前を口にした。
こんどは話が飲めた顔だ。
茜のことはほとんど知らないが、
母親の昌代は、真輔が母というのは…
と、イメージを作っている人なのだ。
めったに会うことも無いが、
小学生の頃から憧れていた人だ。
その人の子供が援助交際に関係があるわけがない。
が、何かを知っている可能性として考えられる。
祖母の話では、おばさんの手伝いもして、
塾へ行き、ピアノも習っているらしい…
「俺も自信がない。
お前、あいつに言われていただろ。
吉沢百合子と付き合うな、って。
あんなところを考えると人違いか、とも思える。」
そう、学校での川崎茜は…
絶対にそう言うことには無関係のイメージだ。
龍雄も、クラスでの茜の様子を考えると、
本当に自信がないようだ。