真輔の風

真輔はそのことを信一に話し、
しばらく隠れて様子を見ることにした。

昌代は… 何か仕切りと言い訳をして謝っているようだ。




「川崎のお袋さん、金でも借りているようだな。
あれは借金の取り立て屋みたいだ。」



信一が中を見ながら囁くような声を出した。



「うん… そんな感じだけど… 
どうしてあんな奴らから借りたのだろう。

あいつは山城組の準構成員だ。
暴力団が金貸しをしているのか。 女は誰だろう。」



しばらくして、
その派手な女は店の商品を物色して紙袋に入れ始めた。

男は相変わらずニヤニヤしてその女を見ているが… 

渡された袋を持ってドアを開けて出て行った。



それを見て、真輔たちは気付かれないように後をつけた。


しばらくすると二人は裏通りの,
暗い感じのスナックへと入っていく。




「あの派手な女はここで働いているようだな。
男は用心棒か。真輔、本当に昨日の奴か。」



信一が真輔に確認の言葉を出した。



「間違いない。
前科者のリストには入っていなかったが確かだ。
絶対に山城組の準構成員だ。」


「どうする。」


「そうだなあ… 
信一、スナックへ入ったこと、ある。」


「そりゃあ… 龍雄と一緒なら、な。」




信一のその言葉。

龍雄がいれば入るけど、
今はいないのだから止めておこう、

という気持ちが謙虚に現れている。

真輔はもちろん一度も無い。


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