真輔の風
真輔はスナックどころかカラオケだって行ったことは無い。
祖母はたまに友人たちとカラオケに行くことがあるようだが、
真輔は興味が無かったし、
誰からも誘ってもらうことも無かった。
そんな事を話しながら様子を伺っていると…
スナックの横、路地にある電柱の影で何かが動いた。
何をしているのだ。
いや、あれは、誰かが潜んでいるようだ。
近付くにつれはっきりとシルエットが浮んできた。
「真輔、あれは横井だ。
お前のクラスの横井晴美だ。」
信一が真輔の耳元で囁いた。
何故自分のクラスでもない女生徒の事を真輔に、
同じクラスと言う真輔に告げているのか。
考えれば滑稽な話だが、
それが現実だから仕方が無い。
既に信一は真輔の性格は把握できていた。
絶対に真輔にはわからない、と。
「同じクラス… じゃあ、茜と友達か。」
「そう言えば… よく話をしていたようだが… 」
「こんな所で何をしているのだ。茜もいるのかなあ。」
が、どう見ても一人のようだった。