真輔の風

スナックの裏口から人が出入りするたびに隠れているが… 

どうも中の様子を伺っているようだ。


横井晴美… 
クラスのことなど無関心な真輔と違って、
信一は知っていた。

真面目な勉強家というタイプで、
川崎茜とはよく勉強の話をしていた。
多分塾も同じところへ行っている。

そんな彼女がどうしてこんな場違いなところにいるのだろう。



 
「聞こう。
こうしていても時間が経つだけだから、聞いたほうが早い。」



全く分からない真輔はそう決めた。

二人は静かに移動して横井晴美に近付いた。




「横井さん、こんな所で何をしているの。」



真輔が小声で声をかけた。

すると、晴美は驚いて叫びそうになったが、

真輔がすかさず口をふさいでいる。




「静かに。ごめん、こんなことをして。
でも、ここで会って驚いたよ。
何をしているの。

僕たちは変な奴を尾行してきた。
そしたら君がいたから… 」




耳元でそう言いながら、
真輔は晴美の口から手をどけた。

晴美は、驚いたような、怯えたような顔をして二人を見ている。

が、よく見ると、泣いていたように目に涙が残っている。




「真輔、この場を離れて話をしよう。」




こんな所を奴らに見つかったら大変、
とばかりに信一が声をかけている。

妥当な意見だ。
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