真輔の風
「そうだな。駅のほうへ行って、明るいところが良いな。
交番の前に噴水、ベンチもあった。
あそこなら座って話が出来る。いい。」
返事は無かったが、
真輔が自然な形で腕を取って歩き出すと、
晴美は素直に付いてきた。
それを見た信一はまた不思議な感覚になっている。
急に子供っぽくなったと思えば、
今は女心の良くわかるプレーボーイのようにも見える。
女の扱いが上手い。
信一は黙って後ろを付いている。
「横井さん、川崎茜を知らないか。
僕たち、彼女に聞きたいことがあって捜しているのだけど…
家にはいなかった。」
その言葉に… 晴美の体は反応したが、
何の返事も無くうつむいているだけだ。
そして泣き出している。
「どうしたの。話してくれなければ分からない。」
しかし、晴美はうつむいたまま泣いている。
肩にかかる黒髪が顔を覆って…
余程悲しいことがあったのか肩を震わして泣いている。
真輔たちは、どうしたものかと顔を見合すしかない。
とても、初めの目的の人捜し、
吉沢百合子にまでは届きそうもないが、
茜の事なら、この晴美が知っているかもしれない。
「あそこに誰か知っている人がいるの。」
真輔はまさか茜が… と思いながら優しく尋ねている。