真輔の風
「実が… 小田切君、宮村君は。
いつも山田君と一緒にいる宮村君… 大丈夫。」
晴美は急に思い出したように龍雄の名前を出してきた。
「龍雄は病院だよ。
えっ、龍雄がやられたのを、君、知っているのか。」
晴美は泣きながら返事の代わりにうなずいた。
「じゃあ、あそこにいた女は…
君なのか。まさか… 」
真輔たちはその晴美の反応が信じられず、
思わず二人は顔を見合わせていた。
思いだした。
先生がテストを採点して返すと、必ず茜と見直して、
何か真剣に話していたように覚えている。
真輔は… ろくに見ないままカバンに押し込んでいる。
横井晴美… 自分たちが探している女とはタイプが違いすぎる。
吉沢百合子なら何となく雰囲気があった。
悪い子ではないが…
噂が出ても別に隠そうともせずに行動していた。
「なあ、実って誰だ。その実があそこにいるのか。
茜がどこにいるか知らないか。
どうもおかしい…
知らなかったけど、おばさんの店には変な奴が来ていたし…
横井さん、全部話してくれよ。
龍雄がやられた場所で信一が吉沢百合子の学生手帳を拾った。
だから僕たちはあそこにいたのは吉沢と思ったのだけど、
君だったのか。」
が、晴美はイエスかノーが分からないように、
泣きながらうつ向いたまま首を上下させている。
しばらくはらちがあかなかった。
落ち着くまで待つしかないか…
が、ひょっとしたら一刻を争う事かも知れない。