真輔の風

「横井さん、昨日龍雄をやったのは、
山城組という暴力団の手下だった。

君は暴力団と関っているのか。茜は。
吉沢百合子も昨日から姿を見せていない。
家に戻らなかった。関係しているのか。

今のスナックに昨日の男が一人、派手な女と入って行った。
あそこは山城組の関係している店なのか。
何でもいいから話してくれよ。」


真輔の言葉に… 
泣きじゃくっていた晴美は驚いたような顔をして真輔を見た。




「昨日… あそこにいたのは私と茜… 
実が騙されて… 私たちあそこへ… 
私たちあそこで… 想像できるでしょ。

そうなの… 怖かった。 
あいつらの狙いは茜だったの。」



「茜… 」




晴美の口から初めて茜の名前が出て、

真輔はオウム返しに茜の名前を口にした。




「そう… 茜のおばさん、借金して… 
あ、私も聞かされたところなの。

でも、騙されてやみ金からお金を借りてしまったみたい。
取立てに行った暴力団が茜を… 

でもいくらお金を借りていてもそんなことは出来ないから、
あいつら… 私も知らなかったのだけど… 

私が付き合っている実、その暴力団の誰かと仲が良くて、
あいつら、私と茜がいつも一緒にいるのを見て、
私が茜を呼んでいる、と実に言づけさせて… 

それであそこへ… 
私は実がいるからと呼び出されて… 」




「あんな工事現場、おかしいとは思わなかったのか。」



信一だ。

どう考えてもこの横井晴美が行くような場所ではなかった。

自分でも一人なら行かない。


信一は主になって話をしないが、

黙って聞きながら、話の筋道を考えているようだ。

そしてたまに口にすることは的を得ている。

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