真輔の風
「実という人は暴力団ではないのだね。」
「ええ、今年、大学を卒業して就職したのだけど、
会社がすぐに倒産して… 今はフリーター。
専門学校へも通っているのよ。
何か特技がないと駄目だと言って… 」
「まともな人じゃあないか。」
晴美の話を聞きながら、
人は表面だけでは分らないものだ、と感じている真輔だ。
そして、親、と言うもののイメージが分からなくなってもいた。
「ええ… でも、先月、中学時代の友達と会って…
あ、私が出会ったのは今年の春、
就職したての時だったの。
それからずっと…
でも、その友達というのがチンピラで…
実、あのスナックで働くようになって…
昨日は… 宮村君が来てくれて…
でも、どうしてだか分からないの。
宮村君、仲間だったのかしら。」
「そんなわけ、ないだろ。
龍雄は一匹狼だ。
あの時、俺たち… 隣の建設現場の上に上がって地図を見ていた。
バイクで走るところを…
そしたら女の悲鳴というか、様子がおかしかったから…
龍雄は動きも早いから…
俺が行った時はもうやられていた。
俺、急いで、真輔の姿が見えたから…
俺、女の後姿しか見ていないから… 」
初めは龍雄の名誉挽回とばかりに口を挟んだ信一が、
次第に話し辛そうに… 目を合わせないようにしている。
「ええ、そうだったわ。
宮村君が来る前に実が怒って…
でも、彼弱くて…
それにあの時は6人もいたから、すぐやられてしまって…
私たちは… ええ、あの男たちに…
怖かった… 写真を撮られそうになった時… 」