真輔の風

「実という人は暴力団ではないのだね。」



「ええ、今年、大学を卒業して就職したのだけど、
会社がすぐに倒産して… 今はフリーター。

専門学校へも通っているのよ。
何か特技がないと駄目だと言って… 」



「まともな人じゃあないか。」




晴美の話を聞きながら、

人は表面だけでは分らないものだ、と感じている真輔だ。

そして、親、と言うもののイメージが分からなくなってもいた。




「ええ… でも、先月、中学時代の友達と会って… 
あ、私が出会ったのは今年の春、
就職したての時だったの。
それからずっと… 

でも、その友達というのがチンピラで… 
実、あのスナックで働くようになって… 
昨日は… 宮村君が来てくれて… 

でも、どうしてだか分からないの。
宮村君、仲間だったのかしら。」



「そんなわけ、ないだろ。
龍雄は一匹狼だ。

あの時、俺たち… 隣の建設現場の上に上がって地図を見ていた。
バイクで走るところを… 

そしたら女の悲鳴というか、様子がおかしかったから… 
龍雄は動きも早いから… 
俺が行った時はもうやられていた。

俺、急いで、真輔の姿が見えたから… 
俺、女の後姿しか見ていないから… 」




初めは龍雄の名誉挽回とばかりに口を挟んだ信一が、

次第に話し辛そうに… 目を合わせないようにしている。




「ええ、そうだったわ。
宮村君が来る前に実が怒って… 
でも、彼弱くて… 

それにあの時は6人もいたから、すぐやられてしまって… 
私たちは… ええ、あの男たちに… 
怖かった… 写真を撮られそうになった時… 」

< 99 / 155 >

この作品をシェア

pagetop