一方通行な恋心
「またたやってんの?」

 よいしょ…と言いながら、美雪ちゃんが私の隣の椅子に座った。

「そうなの! 凄いよネエ」

 結衣ちゃんが頬杖をついて、美雪ちゃんに苦笑した。

「望みのない恋より、次に行けばいいのに。合コンやれば、一発だよ?」

 美雪ちゃんが鞄の中から、シュシュを出して長い髪を軽く縛った。

「望みがなくてもいいの。私、今のところ霧島君以外は考えられないから」

「ひゃー。言うねえ。ま、一途な恋って憧れるけどさあ。辛くない? 苦しくない?」

 美雪ちゃんが、眉尻をさげて寂しげな顔をして口を開いた。

 私は首を横に振る。

「全く辛くないってわけじゃないけど。でも平気。霧島君の真っ直ぐで強い瞳を見ているのが好きなんだ」

 私は霧島君の誰にも負けない強い眼差しを思いだして、頬が勝手に緩んでいった。

 私は平気。片想いでも。

 想いが通じなくてもいいの。

 だって、最初から望みがない恋だってわかってるから。

 告白して、きちんと断られてる。


 霧島君には、恋は必要ないって知ってるから。

 バスケの障害になるのもは、霧島君にはいらないから。

 私は霧島君のバスケの邪魔にならない程度に、傍にいられれば十分なんだ。

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