一方通行な恋心
「悪い。ミーティングが長引いた」

 体育館裏にある5段ほどの階段にべったりと座っていた私の背後から、低い声が降ってきた。

 振り返ると、ジャージ姿の霧島君が首からタオルをかけて立っていた。

「ううん。へーき」

 私は首を横に振る。

 霧島君が腕につけている時計に目をやった。

「外に食べに行くのも、学食に行くのも……微妙だな」

 午後の練習が迫ってきている。

 安易に学校外には出られない。

 私は鞄を開けると、重箱を取り出した。

「これ、作ってきたんだけど」

「園崎が?」

「うん。いつも奢ってばかりで悪いから」

 霧島君が、右の口元を引きあげると、「食える?」と質問してきた。

「食べられるのしか入れてないよ」

 霧島君が、ジャージのポケットに手を入れてから、私の隣に腰を落とした。

「食べられない物も作ったの?」

「結果的に、食べられなさそうなものはお父さんの朝食にしただけ」

「あー、園崎の親父さん、今頃腹を壊してないといいけど」

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