恋の音楽
1.出会いと始まり
「はい、お茶です」
たくさんの人が働いているなかに、一人の女性がお茶を配っていた。
「あれ?春風ちゃん、事務作業」
「そうなんでーす。先週末に仕事終わったんで、今週は事務作業になっちゃったんですよ」
アタシは隣の空いてる席に座りながら、たくさんのデモテープを見た。
「これ持ち込みのデモテープですか?」
「んあ?あー、これね。たくさん持ち込み溜めてたからな。今のうちに聞いてるんだよ」
「いいのありました?」
「なかなか無いな。今回はボツばっかり」
持ち込みをしたからってデビューができるわけではない。
そんなにこの世の中、甘くはないということだ。
「へ〜。大変ですね」
「春風ちゃんは呑気だね」
「お茶配りも大変ですよ」
そんな事をいいながら、デモテープを見ると目に入った、白い普通のデモテープ。
「これ聞いていいですか?」
「ん?でも、それ確かボツになったやつだよ。」
「知ってますよ。でも、聞いてみたくて」
「お好きにどうぞ〜」
「ありがとうございます」
受け取ったデモテープを持って、自分のデスクへと戻る。